背景
内閣府の科学技術基本計画において、日本が目指すべき未来社会の姿としてサイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させた自律的社会環境がSociety 5.0として提唱されています。このSociety 5.0で実現される社会は、様々な知識や情報が共有され、提供されることにより新たな社会価値を生み出すとともに、移動、輸送、通信技術などの自律化によりスマートシティ化させ、少子高齢化、地方の過疎化、貧富の格差などの課題をも克服し、経済活動と社会生活を一変しようとするものです。 産業界においてもIoTとAIを駆使した工業製品の自律型生産への取り組みがスマートファクトリーとして進められています。特に労働人口の減少が顕著となる日本においては、シミュレーションと計測を連携させたプロセスにより性能や品質、コスト、安全性、環境性に優れた新たな価値を短期間に設計する、スマートデザインと一体化した広義のスマートファクトリーの構築が、材料、設計/開発、生産/建設、運用、廃棄/リサイクルを考慮したプロセス全体の自律化のためには必須となっていきます。
目的
この研究プロジェクトでは、IoT時代におけるデジタルツインの姿を明確にし、さらに製品開発における研究開発・設計・生産技術・製造・保守・リサイクルまでの各段階の一連のデジタルツインのフローをデジタル空間に再現するデジタルスレッドの開発・活用を進めることで、Society 5.0時代における日本の製造業においてグローバルな競争力を加速させることを目的としています。 本ラボラトリでは、Hexagonの計測機器と計測ソフトウェア、シミュレーションソフトウェアを設置し、試作/生産段階で計測されたデータと設計用シミュレーションを連携させながら、デジタルツイン技術の研究開発を進めます。開講当初は新規採用の2名の教員を中心に、学内の教員ならびにHexagon MIのグループ会社であるMSCの技術者により研究をスタートさせます。 将来的には、デジタルツインを使いこなす人材の育成とスマートファクトリーの実践に寄与するため、先進的なデジタルスレッドシステムの開発などを行います。 本ラボラトリでは、研究開発の成果を積極的に発信していく予定です。
ラボラトリ長挨拶
Hexagon MIとともにこのプロジェクトをスタートできたことを大変喜ばしく思います。企業との共同研究の元で新たな研究室を発足させるのは東京理科大としても初めての試みでしたが、昨年10月の共同研究開始に続き、4月から講座を発足させることができました。有意義な成果を創出し、プロジェクトを成功に導きたいと考えています。デジタルツインは、医療、災害対応、教育といった社会生活の中でも重要となりつつある概念ですが、欧米に比べてデジタルトランスフォーメーション(DX)に遅れが目立つ日本では、製品開発における実効性のあるデジタルツインの定着は産業競争力の強化の観点からも是非実現したい強力なDXツールです。産業界で設計・製造に携わっておられる現場の方々との結びつきを有効に活用させていただき、当該研究室所属の教員、HEXAGON/MSCの方々とともに、IoTの有効利用も視野に入れつつ、地に足が着いた実践的なデジタルツインの実現を目指していきます。
東京理科大学工学部 情報工学科 藤井 孝藏
HEXAGON MI挨拶
東京理科大学とともに、日本国内では他に類例を見ない共同研究を推進できることをHexagon MIとして大変光栄に思います。人類、社会、産業界のSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)実現のためには、デジタルツイン環境の構築による精度の高いデータの生成と完全活用が極めて重要となります。この共同研究によって、シミュレーション技術と計測技術の自律的なプロセス連携という新しい領域を創成し、各種のプロジェクトを通してデジタルツイン、スマートファクトリーの専門家を育成し、日本の産業界のグローバルな競争力強化に貢献していきたいと考えております。
Hexagon MI上席副社長 エムエスシーソフトウェア株式会社代表取締役社長 加藤 毅彦
*記載されている会社名および製品名は各社の商標または登録商標です。